福祉経験ゼロ。建築業から放課後等デイサービスに参入した話

コラム

本業は建築業です。軽鉄下地やボード工事などの内装工事を手がける会社を経営しています。

福祉の資格はありません。福祉業界で働いた経験もありません。児童発達支援や放課後等デイサービスについて、開業前はほとんど何も知りませんでした。

それでも2024年12月、大阪府で放課後等デイサービスと児童発達支援の多機能型事業所を開所しました。

開所から1年半が経った今、定員10名に対して日平均12.2名が利用しています。有料広告費はゼロ。行政の運営指導で指摘事項はありません。保護者の満足・概ね満足は100%です。

なぜ建築業の経営者が放デイを始めたのか。何を間違えて、何がうまくいったのか。これから参入を考えている経営者の方に向けて、正直に書きます。


1. なぜ建築業なのに放デイを始めたのか

建築業は仕事の性質上、景気や元請けの動向に左右されやすい業種です。売上が安定している年もあれば、そうでない年もある。経営者として、収益の柱を一本だけに頼ることへの不安は常にありました。

別の収益の柱を作りたいと考えていたとき、放課後等デイサービスという業態が目に入りました。

「放デイは儲かる」という話はよく聞いていました。まわりの経営者から話を聞くこともありました。ただ、調べれば調べるほど、単純に儲かるという話ではないこともわかってきました。

開業した事業所の多くが定員割れに苦しんでいる。開業できても、利用者が集まらない。職員が定着しない。保護者に選ばれない。そういう現実も見えてきました。

だからこそ、最初から「設計して始める」ことにしました。勢いで始めるのではなく、経営者として何が必要かを考えてから動く。それが本業での経験から学んだことでもありました。


2. 開業前に勘違いしていたこと

正直に言うと、最初は「福祉の専門知識が必要だ」と思い込んでいました。

自発管(サービス管理責任者)や保育士の資格がないと運営できないのは知っていました。でも、経営者自身が福祉の専門家でなければ経営できない、という感覚がありました。

これは間違いでした。

必要なのは福祉の専門知識ではなく、経営の設計力でした。誰を採用するか。どう育てるか。保護者にどう見せるか。行政とどう関係を作るか。利用者をどう集めるか。これらは経営の問題であり、業種を問わず通用する話でした。

むしろ、福祉業界特有の「現場任せ」「なんとなくやっている」という文化に染まっていないことが、強みになると後から気づきました。

先入観がないから、最初から設計できる。これが福祉未経験の経営者が持つ、見えない強みです。


3. 実際に苦労したこと

苦労したことはたくさんあります。その中でも特に大きかったのは3つです。

指定申請の複雑さ

放デイを開業するには、都道府県や市区町村の指定を受ける必要があります。書類の種類が多く、要件の確認に時間がかかります。

私は指定申請を行政書士に依頼しました。自分で時間をかければできないことはありませんが、その時間と労力は他に注ぐべきだと判断したからです。経営者の時間は、お金で買えるものに使った方がいい。これも経営判断の一つでした。

ただ、ここで気づいたことがあります。行政に「わからないので教えてください」という姿勢で何度も連絡することで、関係が少しずつ作られていきました。これが後になって大きく効いてきます。

採用の難しさ

保育士の採用は想定より難しかったです。求人を出しても反応が薄い時期がありました。どの媒体に出すか、どんな文面で書くか、給与をどう設定するか。試行錯誤の連続でした。

採用には設計があります。感覚でやっていると、同じ失敗を繰り返します。

保護者への信頼構築

開所直後は、当然ながら実績がありません。なぜここを選ぶのか、保護者に選んでもらう理由を作ることが最初の課題でした。

口で言うだけでは伝わりません。見えるものを作ることが必要でした。


4. なぜ定員超えできたのか

定員を超えられた理由を一言で言うなら、「最初から子どものためと経営を両立させる前提で考えていたから」だと思っています。

収益だけを目的に参入しなかった、ということです。

保護者・子ども・職員を先に考えた方が、結果として利益はついてくる。この順番を守ることが、全ての判断基準になりました。

採用でも、療育でも、保護者対応でも、内装でも、迷ったときはこの基準に立ち返りました。

具体的に何をしたかについては、後述するPDFに詳しく書いています。ただ、その前提として「何のためにやるか」という軸がないと、ノウハウは機能しません。


5. 今なら最初に何をするか

もし今から開業するとしたら、最初にやることは変わりません。ただ、優先順位ははっきりしています。

最初に決めるのは「どんな事業所にしたいか」ではなく、「誰に選ばれたいか」です。

保護者に選ばれたいのか、相談支援員に紹介されたいのか、若い保育士が働きたいと思う事業所にしたいのか。この3つは別々の話ではなく、繋がっています。

でも「誰に選ばれたいか」が決まると、内装も、ブログも、求人の文面も、全部の設計が変わります。

逆にここを曖昧にしたまま開業すると、何もかもが中途半端になります。


6. これから開業する人へのアドバイス

他業種から放デイに参入しようとしている経営者に、正直に伝えたいことがあります。

福祉の経験がないことは、デメリットではありません。

元施設長や元自発管の方と勝負する必要はありません。彼らとは土俵が違います。あなたが持っている経営経験・採用経験・組織運営経験は、福祉業界の多くの事業所が持っていないものです。

ただし、設計なしに始めると、経験者でも失敗します。

何を決めてから開業するか。どの順番で動くか。ここを間違えると、お金と時間を大きく無駄にします。

放デイで定員割れに苦しんでいる事業所の多くは、設計の問題です。立地でも資金でも、福祉知識でもありません。


7. このPDFを作った理由

この記事を書きながら、「自分が開業前に読みたかったものを書いた」という感覚があります。

開業前に欲しかったのは、申請書類の書き方ではありませんでした。「開業後に利用者が集まる事業所を作るには、何をどの順番でやればいいのか」という答えでした。

それを1冊のPDFにまとめました。


福祉経験ゼロ。建築業から参入。
それでも開所後9ヶ月で黒字化。開所1年半で定員超えを実現した放デイ経営の記録。

開業前に何を設計するべきか。なぜ利用者が集まるのか。なぜ職員が辞めないのか。実際の経験をもとにまとめています。

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